Design Engineering

Gingerは様々なプロトタイプ開発、新規事業の立ち上げに関わっていますが、そういった分野で「デザインエンジニアリング」という言葉をよく聞くのではないでしょうか。実際、我々が行っている仕事のプロセスも「デザインエンジニアリング」に当たるものだと思います。

そこで今回は「デザインエンジニアリング」とは何なのか、どういった場面で役に立つのか、そしてそれを実践するにはどうすれば良いのかについてNagoya boost 10000にて講演させていただいた内容を元にまとめていこうと思います。

デザインエンジニアリングとは?

デザインとエンジニアリングを同時に行うこと。

デザインエンジニアリングの定義は人により様々かと思いますが、「デザインとエンジニアリングを同時に行うこと」と考えるとシンプルに整理ができます。

通常、何か製品やサービスを作るとき、デザインとエンジニアリングのプロセスは別れているため、デザイナーにとってはエンジニアの要求仕様がデザインの足枷となり、エンジニアにとってはデザイナーの自由奔放なアイデアが開発や製造の負担をいたずらに増やすという不幸な状況が生まれがちです。

そこで、デザインとエンジニアリングを分けず、同時に両方のことを考えようというのがデザインエンジニアリングです。もしデザイナーが開発のことも考えていれば、開発の負担を抑えた上でより美しいもの、より使いやすいものを提案することが出来ますし、エンジニアがデザインのことも考えていれば、見た目やユーザビリティを考慮した上で機能のブラッシュアップを行うことが出来るでしょう。

また、デザイナーとエンジニアが相互の視点を持ち寄ることで、新しいアイデアにつながることも考えられます。

デザインエンジニア

それでは、「デザインエンジニアリング」を実践するにはどうすれば良いでしょうか?その一つの回答として「デザインエンジニア」の存在があります。

デザイナーとエンジニアでは使う言葉や表現、ツールが異なります。また、社内で部門が分かれており交流しづらかったり、そもそも商品開発のプロセスがデザインと開発で明確に分かれておりコラボレーションの機会がない場合が多いです。

「デザインエンジニア」はデザインとエンジニアリングの両方の知識、スキル、考え方を持った人で、デザイナーとエンジニアの「通訳」のような役割を果たすことができます。また、社内や社外に「デザインエンジニア」を持ち、商品開発の早い段階で彼/彼女らを通すことで、デザインとエンジニアリングが別れてスタートしないという効果があります。

デザインエンジニアリングが役立つ場面?

新しい製品・サービスを創り出すとき

デザインエンジニアリングはどのような商品開発にも活かすことが出来ますが、特に全く新しい製品やサービス、新規事業の立ち上げなど不確実性が高いプロジェクトで役に立ちます。

全く新しい製品やサービスを作るとき、そこには前例がなく決まったやり方というものがありません。例えば、何かの部品が筐体にうまく収まらないという問題が起きたとします。そのとき、内部の設計を変えて収めるようにするべきなのか、筐体自体のデザインを変更するべきなのかはデザインとエンジニアリング、両者の視点に立って考えないと分かりません。不確実性が高いということは、より幅広い視点で課題を捉える必要があるということでもあるのです。

デザインエンジニアリングの事例

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Charles Eamesはデザインの歴史をまとめた本を読めば必ず載っているようなミッドセンチュリーの代表的なデザイナーの一人ですが、実はプライウッド(成形合板)の加工技術を発明した人物でもあるというのはあまり知られていません。代表作の1つ“DCW”はその技術を利用して作られていますが、これはまさに新しい技術によって新しいデザインが可能になった「デザインエンジニアリング」の代表的な例だと言えます。

他にも家具職人で自ら手作りで制作しながらデザインを行ったHans J. Wegner、職人との密接な協働によって代表作の籐の椅子を作り上げたと言われる剣持勇など、今よりもデザインとエンジニアリングが明確に分かれていなかった時代、数々の名作が作られてきました。そう考えるとデザインエンジニアリングは元々意識せず行われてきたことであり、そこまで特殊なプロセスではないのかもしれません。

Appleは「デザインエンジニアリング」という言葉は使っていませんが、Steve Jobsも以下のような有名な台詞を残しています:

“It is in Apple’s DNA that technology alone is not enough―it’s technology married with liberal arts, married with the humanities, that yields us the results that make our heart sing.”

まとめ

いかがでしたでしょうか?デザインエンジニアリングは新しい商品や事業を立ち上げる際に有効な方法であること、実は特殊なやり方ではなく、昔から意識せず行われてきたことについて書かせていただきました。新商品の企画やスタートアップなど、これからビジネスを始められる際のご参考になれば幸いです。